最近注目の「Time in Range(TIR)」とは?血糖値管理で重要な新指標をわかりやすく解説

血糖値の基礎知識

最近注目の「Time in Range(TIR)」とは?血糖値管理で重要な新指標をわかりやすく解説

はじめに

健康診断で「血糖値がやや高め」「HbA1cが基準値を超えている」と指摘されたことはありませんか。

40代・50代になると、こうした数値の変化が気になり始める方が増えてきます。

最近、血糖値管理の世界で注目されているのが「Time in Range(TIR)」という指標です。

聞いたことはあっても、何を意味するのか、HbA1cとどう違うのか、ピンとこない方も多いのではないでしょうか。

この記事では、TIRの基本的な考え方と、日常生活でどのように役立てられるのかを、できるだけわかりやすくお伝えします。

読み終えたときに「今日からできることが見えてくる」状態を目指してまとめました。

TIRとは?なぜ今注目されているのか

Time in Range(TIR)とは、直訳すると「目標範囲内の時間」という意味です。

血糖値が、あらかじめ決めた目標範囲の中にとどまっている時間の割合を示す指標になります。

これまで血糖値の管理は、健診時の血液検査やHbA1c(過去1〜2か月の血糖値の平均を反映する値)が中心でした。

しかし、平均値だけでは、1日の中で血糖値がどれくらい上下しているかまでは見えてきません。

そこで活用されるのが、CGM(持続血糖モニター)という機器です。

皮膚に小さなセンサーを貼ることで、血糖値の変化を継続的に記録できます。

このデータをもとに算出されるのがTIRです。

CGM機器が以前より使いやすくなったこともあり、医療現場や研究の場でTIRという考え方が広がってきました。

ただし、TIRは主に医師の指導のもとでCGMを使用している方を対象とした指標です。

一般的な健診結果だけでTIRを正確に算出することはできない点は、あらかじめ知っておくとよいでしょう。

血糖値・HbA1cとの関係

HbA1cは、血糖値の「平均的な高さ」を知るための指標として、健診でもよく使われています。

一方で、HbA1cが同じ数値であっても、実際の血糖値の動き方は人によって異なることがあります。

たとえば、一日中ゆるやかに安定している人と、急に上がって急に下がる人とでは、HbA1cの値が近くても、体への負担は違う可能性があると考えられています。

TIRは、こうした「血糖値の波」の部分を補って見るための指標といえます。

国際的な専門家会議による合意文書では、CGMを使用する方を対象に、血糖値がおおよそ70〜180mg/dLの範囲にとどまっている時間の割合をひとつの目安として示しています。

あわせて、目標範囲より高い時間(Time Above Range)や、低い時間(Time Below Range)も合わせて確認することが推奨されています。

なお、この目安はあくまで一般的な指標であり、年齢や持病、治療方針によって個人ごとの目標は変わります。具体的な目標値については、必ず主治医と相談しながら決めていくことが大切です。

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TIRを改善するための実践方法

TIRを意識した生活習慣は、特別なことではなく、日々の小さな工夫の積み重ねです。

食事の工夫

野菜や汁物から先に食べる「ベジファースト」は、血糖値の急な上昇をやわらげる工夫として知られています。

白米やパンなどの糖質を最初に食べるよりも、食物繊維やたんぱく質を先に取り入れるほうが、血糖値の変動がゆるやかになりやすいと考えられています。

また、朝食を欠食すると、次の食事(セカンドミール)の後に血糖値が上がりやすくなることが報告されています。

朝食をきちんと取ることも、血糖値の波を小さくするひとつのポイントです。

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運動と睡眠

食後に軽くウォーキングをするなど、体を動かす時間を作ることも有効とされています。

激しい運動でなくても、食後15分程度の散歩で違いを感じる方もいます。

加えて、睡眠不足や強いストレスは血糖値の変動に影響することがあるため、生活リズムを整えることも大切な要素です。

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コンビニ・外食でできる工夫

忙しい日々の中では、コンビニや外食を利用する機会も多いはずです。

完全に避ける必要はなく、選び方を工夫することがポイントになります。

コンビニでは、サラダや野菜スティック、おでんの野菜系の具材などを先に選び、その後におにぎりやパンを組み合わせると、食べる順番を意識しやすくなります。

サラダチキンや豆腐、ゆで卵といったたんぱく質を取り入れるのもおすすめです。

外食の場合は、定食であれば味噌汁や小鉢から食べ始め、白米は最後にまわすという順番を意識するだけでも変化につながりやすいといわれています。

丼ものや単品の麺類だけで済ませるよりも、野菜やたんぱく質を含む定食スタイルを選ぶほうが、血糖値の急上昇を避けやすい傾向があります。

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注意点

TIRやCGMは便利な考え方ですが、いくつか注意したい点があります。

まず、TIRはあくまで血糖値の変動を把握するための指標であり、これだけで病気の診断ができるものではありません。数値が気になる場合は、自己判断せずに医療機関を受診してください。

また、極端な糖質制限など、過度な食事制限はかえって体調を崩す原因になることがあります。

生活改善は、無理のない範囲で少しずつ続けることが基本です。すでに糖尿病の治療を受けている方は、食事や運動の変更について、必ず主治医に相談してから取り入れるようにしましょう。

健康管理士ワンポイント

「血糖値の数値そのもの」だけでなく、「一日の中でどう変動しているか」に目を向けてみましょう。

食後に眠くなりやすい、夕方に強い空腹を感じやすいといった体感も、血糖値の波を知るヒントになることがあります。

記録をつけてみると、自分の生活パターンが見えてくるかもしれません。

まとめ

Time in Range(TIR)は、血糖値が目標範囲にとどまっている時間の割合を示す指標で、HbA1cだけでは見えにくい「血糖値の波」を補って確認するための考え方です。

CGMを使用していない方でも、食べる順番、朝食をとる習慣、食後の軽い運動など、TIRの考え方をヒントにした生活の工夫は取り入れやすいものばかりです。

気になる症状や数値がある場合は、無理に自分で判断せず、医療機関に相談しながら進めていきましょう。

FAQ

Q1. TIRは健診の結果だけでわかりますか?
A. 一般的な健診結果だけでは算出できません。TIRはCGM(持続血糖モニター)で継続的に記録したデータをもとに計算される指標です。

Q2. TIRとHbA1cはどちらが大事ですか?
A. どちらか一方が優れているというものではなく、補い合う指標です。HbA1cは平均的な傾向、TIRは日々の変動を見るのに役立つと考えられています。

Q3. CGMは自分で購入して使えますか?
A. 製品によって入手方法や対象者が異なります。使用を検討する場合は、医療機関やかかりつけ医に相談することをおすすめします。

Q4. TIRを意識すれば血糖値の悩みは解決しますか?
A. TIRはあくまで状態を把握するための指標です。生活習慣の見直しと合わせて活用するものであり、数値の改善には個人差があります。気になる場合は医師に相談してください。

Q5. 糖尿病と診断されていない人にもTIRは関係ありますか?
A. 現時点ではCGMを使った詳細な管理は主に治療中の方が対象です。ただし、血糖値の変動という考え方自体は、予備群とされる方の生活見直しにも参考になります。

CGMと血糖自己測定(SMBG)の違い

項目CGMSMBG
測定24時間連続採血時のみ
特徴血糖変動が分かるその時点の値
用途傾向把握数値確認

よくある質問(追加)

Q. CGMは痛いですか?

A. 装着時に軽い刺激を感じることがありますが、感じ方には個人差があります。

Q. CGMは保険適用ですか?

A. 保険適用の可否は利用目的や治療内容によって異なります。詳しくは医療機関へご確認ください。

Q. 血糖値を下げるには何から始めればよいですか?

A. 食事・運動・睡眠など生活習慣を見直し、必要に応じて医療機関へ相談しましょう。

Q. HbA1cは毎日変化しますか?

A. HbA1cは過去1〜2か月程度の平均的な血糖状態を反映する指標です。

Q. 食物繊維は毎食摂った方が良いですか?

A. 毎食少しずつ取り入れると血糖値対策や腸内環境改善に役立つ可能性があります。

あわせて読みたい記事

血糖値や生活習慣の見直しに関心がある方は、以下の記事もあわせて参考にしてください。

まずは今日からできること

CGMで血糖値の変化を知ることはスタート地点です。
日々の食事や運動を改善することで、より良い血糖コントロールにつながります。

関連記事もあわせて読むことで、食事・運動・睡眠まで含めた健康管理の理解が深まります。

参考文献

  • 厚生労働省 e-ヘルスネット「血糖値」
  • 日本糖尿病学会「糖尿病診療ガイドライン2024」
  • Battelino T, et al. “Clinical Targets for Continuous Glucose Monitoring Data Interpretation: Recommendations From the International Consensus on Time in Range.” Diabetes Care. 2019.
  • 国立国際医療研究センター 糖尿病情報センター